昔、高校生のころだったろうか?車のサイドがウッドパネルのバンにカヌーを積んでいる写真を見てあこがれていたのを最近よく思い出す。
あのころ、カヌーと言えば、僕の頭に浮かぶのはコールマンのマークが入ったカナディアンであった。
友人の何人かは、まさにあのころの僕の夢を実践している。その影響が強いのだろうが、あれから20年以上がたち、心の中で少しずつその夢を消化したいと思うようになっていた。
そして、今日いつも通いなれている岩場の多い、奥多摩から多摩川を下り自宅まで帰る計画を立て、実行した。
経験のない僕は、ここならしょっちゅう釣りに入り渓相も解っていて、いざというときは青梅線が横を通っているため敗退も容易だと考え選択した。
素人の僕が考えていたのは、核心は御岳の激流と所々に点在する通過できない人工物(ダムや堰)と考えていた。そのことも考慮し、今回の舟はたたむとザックに入ってしまうグモッテクスのダッキーだ(借りものだが)。パートナーは体力と人間性で信頼できる友人のY君。
快晴の中、息揚々準備をし、出発し御岳までは良かった。御岳を沈せずスムーズに通過した時、僕らの脳内には、アドレナリン爆発状態で「やった!奇跡ですね。後は本流だから瀞場だ。がんばろう」と声を掛け合っていた。
ところが、そこからが地獄だった。本流の水量と河川の蛇行により、川幅の狭まるところや岩のつき出したところには、想像以上の危険があり、距離は想像以上に長くなってしまう。
それにプラスし、このダッキーは自動排水弁がない。カヌーをやる人はわかると思うが、静水域で遊ぶために作られているカヌーであるのだ。
ホワイトウォーターでは、必ず水を被るため、ダッキーに自働排水便がないと舟は一瞬でお風呂状態となってしまう(笑)。まさにカチカチ山の狸だ。
沈み岩にラップされ動けなくなったり、バランスを崩し沈し、足が全くつかずに、次の瀬まで流されたり、急激な蛇行に操船が間に合わず、そこに立ちはだかる岩で横転してしまいそのまま(水中4m程だろうか)に引きずり込まれ、パドルをひかっけて動けなくなったり、…極めつけは河川の距離を計測せずにスタートしたため、道路とそれほど変わらないだろうと安易に考え、目標ゴールまでは行けず、途中暗くなりはじめ再度、行動を検討した点だろう。
全く愚かなチャレンジであった。今思うと、御岳を通過した際コースを開けてくれたカヌーイストたちは、ヤマヘルをかぶりお風呂の様なドロ舟に乗った僕らを見て、頭の上にいっぱいクエスチョンマークガ出ていた様な気がする。
全く愚かなチャレンジであった。到着したのは18時ごろ、圏央道の下で二人で震えながらの撤収となった。
反省と学事の多い一日となった。
クライマーとしては、誰も知らない様なものすごいきれいな岩を幾つも見つけ、いつかボートエントリーで取り付いてみたいとまた夢は膨らんだ。